冤罪は、なぜ起こるのか?

冤罪が発生する仕組み

冤罪が発生する仕組みには、複数の要因が絡み合っていることが多く、それぞれの要因が相互作用していることがあります。
以下に、冤罪が発生する主な要因をいくつか挙げてみます。


証言や証拠の評価を誤る

捜査や裁判の過程での誤った証言や証拠が、冤罪の要因となることがあります。

例えば、目撃者の記憶が曖昧な場合には、誤った証言が出てくることがあるかもしれません。
また、科学的な鑑定に誤りがある場合にも、証拠が誤解釈されてしまうことがあります。


司法生制度の問題

司法制度の問題が冤罪の発生につながることもあります。
例えば、警察や検察が捜査にあたる際に、過度な圧力をかけたり、取り調べでの違法な手段を使ったりすることがあるかもしれません。
また、証拠を改ざんするなどの不正行為があった場合には、正当な判断ができなくなることがあります。後半で詳しく説明していきます。


差別や偏見

被告人の社会的地位や人種・性別・年齢などによって、不当に有罪判決を下すことがあるかもしれません。
特に、弁護士を雇えない貧困層や、マイノリティの人々は、司法制度の不平等に苦しむことが多いとされています。


以上のように、冤罪が発生する裏には複数の要因が絡み合っていることがわかります。また、社会的な制度や文化、個人的な問題など、様々なレベルでの改善が求められています。

次に、司法制度について触れていこうと思います。


冤罪を生む司法制度の問題点

供述調書の信用性

警察や検察の調書は、容疑者が逮捕された際に作成されます。しかし、容疑者は拘束されているため、調書を読んで理解することもできず、過去には強制的に調書を書かされた例もあります。そのため、調書に記された内容が真実であるかどうかについては疑問が残ります。 


証拠の偏向

警察や検察が犯人像を先に決めてしまうと、その犯人像に合致するような証拠を集めてしまうことがあります。また、必要以上に長時間取り調べを行ったり、容疑者に対して脅迫や暴力を振るうことで、無実の容疑者でも自白させてしまうことがあります。


専門家の役割

司法制度において、科学的な分析が必要とされる場面があります。たとえば、DNA鑑定などです。しかし、その分野の専門家が不足していたり、捜査機関に都合のいい鑑定結果を出してしまうことがあるため、真実を裏付けるための科学的な分析に問題が生じることがあります。

公平性の欠如

司法制度において、裁判所は公正であることが求められます。しかし、裁判官の意見や政治的影響力などによって、公平性が欠けることがあるため、判決が正当なものかどうかについても疑問が残ります。


冤罪を防ぐためにできること

上記の問題点を改善するためには、以下のような取り組みが必要です。 

録音・録画の義務化

容疑者取り調べや裁判での証言は、録音・録画を義務化することで、誤解釈や虚偽の供述を防ぐことで、容疑者の言動や行動を客観的に記録することができ、真実に基づいた判断が可能となります。


科学的な鑑定の確立

科学的な鑑定においては、信頼性が非常に重要です。そのため、専門家の資格や鑑定方法を明確にすることが必要です。また、専門家の意見が公正かつ中立的であるよう、独立した機関による管理・監督が行われるようにすることが重要です。


司法制度の改革

司法制度には、多くの課題があります。そのため、司法制度の改革が必要となります。たとえば、判例法に基づく判断や判例の公開によって、判決が公正であることを示すことができます。また、刑事訴訟法の改正により、取り調べの録音・録画が義務化されたり、取り調べ時間の制限が設けられたりすることで、公平性が確保されます。


教育の充実

警察や検察の職員、弁護士、裁判官など、司法制度に関わる人々の教育が充実することも重要です。特に、冤罪が起こりうる要因や、真実を追求することの重要性について理解することが求められます。また、弁護士や裁判官の研修などにおいて、科学的鑑定に関する知識を身につけることが必要とされます。


最後に

冤罪は、司法制度に問題があることが背景にあるとされています。特に、供述調書の信用性や証拠の偏向、専門家の役割、公平性の欠如などが問題点として指摘されています。これらの問題点を改善するためには、録音・録画の義務化や科学的な鑑定の確立、司法制度の改革、教育の充実など、様々な取り組みが必要とされます。真実を追求することが最も重要なことであり、冤罪が起こらない社会を実現するためにも、これらの取り組みが必要不可欠です。


また、冤罪を防ぐためには、個人レベルでも様々な取り組みが必要です。例えば、警察との接触時には、自己の権利を理解し、必要に応じて弁護士や家族に連絡することが重要です。また、自分自身について正確な情報を提供することや、冤罪を生む要因となるような不適切な行動を避けることも重要です。


さらに、冤罪を防ぐためには、社会全体での意識改革が必要です。たとえば、マスメディアが報道する事件に対しては、単純化されたイメージや偏見を持たず、客観的な情報収集と分析を行うことが求められます。また、社会全体で人権尊重の意識を高めることや、法律や司法制度の理解を深めることも重要です。


冤罪は、被害者だけでなく、社会全体に悪影響を及ぼす問題です。冤罪を防ぐためには、様々な取り組みが必要です。司法制度や科学的鑑定の確立、教育の充実、個人の権利意識の向上、社会全体での意識改革などがその一例です。真実を追求し、冤罪が起こらない社会を実現するために、これらの取り組みが必要であることを再確認することが重要です。

以上のように、冤罪が発生するメカニズムには複数の要因が絡み合っているため、社会的な制度や文化、個人的な問題など、様々なレベルでの改善が求められています。

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勝又拓哉さんは無実です

今市事件とは

今市事件は冤罪!有罪判決には多くの疑問がある

今市事件の特徴は、①勝又さんの犯行を裏付ける物的証拠がない、②有罪を支える証拠は「自白」と「状況証拠」だけということです。

「自白」と客観的事実が矛盾する

「自白」では、
①被害者の両手両足をガムテープで縛った状態で立たせ、被害者の右肩を左手でつかみ、正面から右手で一気に10回刺した、5回くらい刺した時、被害者は崩れ膝立ちになったが、刺し続けた、



②その後被害者を投げ捨てた、③凶器や軍手などを帰る途中で捨てた、とされています。

しかしこの犯行態様は、被害者の刺創や現場の状況と矛盾します。

殺害方法と被害者についた幾何学模様の傷の矛盾

自白では、被害者は5回刺されたあと、立った状態から膝立ちになり、もう5回刺されたことになっています。他方、勝又さんは、同じ姿勢で胸を10回刺しているのだから、刺し傷の角度は最初の5回と後の5回で変わるはずであるが、ほぼ同じ角度で刺されたあとしか残っていません。被害者は肩をつかまれているはずであるのに、つかまれた跡であるアザはありません。

また、司法解剖を担当した教授によると、寝かされた状態で真上から刺されたと仮定すると、刺し傷の形状に良く符号すると述べています。

殺害方法と血痕との矛盾

「自白」どおり、立った状態で被害者を刺した場合、下の方(足の方)に流れた血痕があるはずです。しかし遺体には、身体の上方や左右に流れる血痕はありましたが、下の方に流れる血痕はありませんでした。
これは寝かせた状況で刺したことを示すものです。

殺害場所は別な場所

鑑定結果から、被害者の体から少なくとも1㍑の血液が流れ出たと考えられます。しかし、現場にある被害者の血痕は数滴で、弁護団の実験から地面に血が染み込んだ可能性がないことが明らかになりました。真犯人は、どこか別の場所で殺害して遺体を遺棄したと考えられます。

「自白」を裏付ける証拠がない

「わいせつ行為」の痕跡はない

「自白」では、当初「強姦した」、その後、「被害者の陰部や胸を触った」「キスしたり、自分の陰茎を握らせ、射精した」と供述しています。しかし、被害者にはわいせつ行為を受けた痕跡はありません。「自白」通りであれば遺体に付着しているはずの勝又さんのDNA(精液、汗、唾液、皮膚片など)は検出されていません。

第三者の犯行の可能性

被害者の頭に貼り付いていた粘着テープから、勝又さんのDNAは検出されず、第三者のDNAが存在する可能性が出ています。

この鑑定について、一審では警察の科捜研の鑑定結果のみが法廷に提出されました。控訴審において弁護団は、鑑定過程のデータの一部エレクトロフェログラム(電気泳動図)のチャートを開示させました。驚くべきことにこのデータには、被害者、勝又さん、鑑定人のDNAとも違う第三者のDNAが検出されていたことが判明しました。弁護団は、粘着テープは真犯人がもっとも接触した可能性が高く、勝又さんが犯人ではないことを示しています。

加えて、一部報道では、裁判では提出されませんでしたが、遺棄現場で栃木ナンバーのワゴン車が目撃されていたり、遺棄現場で勝又さんのものと違う運動靴の足跡が採取されていたりなど、勝又さん以外の存在を示す証拠が報じられています。

「秘密の暴露」がない

「自白」には、真犯人しか知りえない「秘密の暴露」がありません。凶器を捨てた場所、血で汚れた手を洗った公園などは不明のままで、凶器や軍手、被害者を脅したとされるスタンガン、返り血をあびたという衣服なども発見されていません。

また、勝又さんの自白では、殺害後の着衣の処分について一切触れられておらず、もし、自白通りなら返り血を浴びた服で、茨城県常陸大宮市から栃木県鹿沼市までの3時間あまりを運転していたことになります。

「自白」は強制されたもの

勝又さんは別件逮捕後、6月までの約4ヶ月間、連日長時間の取り調べが続き、232時間に及んでいます。取調官は、否認する勝又さんをビンタして壁にぶつけたり、「殺したというまで寝かさない」「殺してごめんなさいと50回言え」と拷問まがいの取調べを行っています。その上、台湾生まれの勝又さんは、日本語が不得手で、他人とうまくコミュニケーションをとることが出来ませんでした。警察は、このような勝又さんの弱みにも付け込んで「自白」調書を作りあげたのです。

憲法38条では、強制、長期間拘禁された後の自白は証拠とすることができないと明記されています。勝又さんの自白は、強制された(任意性がない)ものであり、有罪の証拠にはなりません。

しかも、裁判で公開された「自白」の録画映像には、警察に心身共に痛めつけられて人格的に屈服させられ「自白」に至る過程は録画・録音されていません。一審判決が根拠とした録画映像は、捜査機関に都合のよい取調べ場面だけが録音・録画された不当なものです。

なお、控訴審の判決において取調べの録音録画映像で事実認定した違法性を指摘し、一審判決を破棄しています。

不公正な裁判

検察の後出しジャンケン、それを認める裁判所

東京高裁は、状況証拠が乏しいことに加え、勝又さんの自白の核心部分に信用性もないことが明らかになり、この矛盾を解消し有罪と認定するために、検察に起訴状記載の殺害日時と場所について訴因(審判の対象となる犯罪事実)の変更を促しました。また、高裁が、勝又さんの犯人性に固執するあまり、罪となるべき事実から「動機」もなくなりました。

 
刑事裁判にとって、何が罪となる事実なのかが審判の対象です。攻撃防御の対象を明確に特定することは被告人・弁護人の防御権、弁護権を保障するうえで大事な刑事裁判の原則です。しかも、控訴審の事実調べの終盤になっての訴因の変更は「あと出しジャンケン」もいいとこで、とても公正な裁判とは言えません。

裁判官の独断

高裁判決は、状況証拠を総合評価すれば勝又さんの犯行を認定できるとしました。その中でも、別件逮捕を利用した身柄拘束中、勝又さんが本件殺人事件を大友検事に「自白」させられた数日後に、母親に宛てた手紙を有罪の決め手と判断しました。

その手紙には、「自分で引き起こした事件」「めいわくをかけてしまい、本当にごめんなさい」などという内容が記載され、検察は状況証拠の一つとして有罪を主張しました。これに対して、弁護側は別件逮捕された商標法違反事件とも読め、本件犯行を示すものではなく、多義的に解釈できると反論しています。

一審判決は、「手紙の記載内容のみからでは「事件」が何を指すのかは必ずしも明白とはいえない」「この手紙の存在のみでは、被告人の犯人性を直接的に起訴付ける事情とはなり得ない」と、多義的に解釈できると判断しています。高裁の裁判官の勝手な思い込みだけで、無期懲役とされてはたまりません。

無実が明らかとなった足利事件の菅家さんが、最初に家族に宛てた手紙も、家族に無実を信じてほしいのか、事件を起こした謝罪の意味なのか多義的に解釈できます。高裁判決は、足利事件や過去の冤罪事件の教訓が全く生かされていません。

高裁の論理矛盾

自白は信用できないが、やったのは間違いない

一審の宇都宮地裁(裁判員裁判)は、「状況証拠のみからは勝又さんの犯人性を認定できないが」、「自白」は「犯人でなければ語ることができない具体的、迫真性がある」として、無期懲役の有罪判決を言い渡しました。

二審の東京高裁では、弁護団が提出した法医学者の鑑定書や実験によれば、被害者の遺体にはわずかな血液しか残っておらず、少なくとも1㍑の血液が流れたのに、現場にある被害者の血痕は数滴であったことがわかりました。弁護団の実験から地面にしみ込んだ可能性も否定されました。また、遺体に残された創傷が自白の殺害態様と矛盾することも明らかにされました。

高裁判決は弁護団の反証にもとづき、殺害日時、場所、殺害態様の供述部分は信用できないと一審判決を破棄しました。東京高裁は、検察の有罪ストーリーが破綻した以上、無罪判決を言い渡すべきでした。

ところが、自白と客観的な事実との矛盾については「情状を良くするために虚構を作出した疑いは否定できない」とし、「一連の犯行を行った犯人であることを自認している点では信用できる」として、それを裏付ける証拠も示さず判断しました。

高裁判決は、これまでの冤罪事件の教訓を踏まえて判例が積み上げてきた自白の判断方法に反します。

第三者のDNA

勝又さんのDNA・指紋など一切検出されず 

高裁判決は、状況証拠を総合評価すれば勝又さんの犯行を認定できると言います。しかし、勝又さんの無罪方向の状況証拠は総合評価に入れずに切り捨てています。有罪のストーリーにあう証拠だけを集め、不都合な証拠を排除しては正しい結論を導きだすことはできません。高裁の状況証拠の判断は、最高裁判例にも反するものです。

勝又さんの「自白」では、当初「強姦」した、その後、「被害者の陰部や胸を触った」「キスをしたり、自分の陰茎を握らせ、射精した」と供述しています。しかし、被害者にはわいせつされた痕跡はありません。「自白」の通りであれば、遺体の髪の毛の中から採取された粘着テープや遺体に付着しているはずの勝又さんのDNA(精液、汗、唾液、皮膚片など)は検出されていません。また、高裁段階で開示された鑑定データからは、捜査関係者でもない第三者のDNAが存在することなどが明らかになっています。

ところが高裁は、検察官の「DNAが汚染された可能性がある」という主張を鵜呑みにして、勝又さんの無罪を示す証拠を科学的な根拠もなく排斥しました。

 

今市事件とはどんな事件だったのか?詳しく説明します

今市事件:弁護団および検察の主張と高裁の判断