冤罪を防ぎながら犯罪の解決に取り組むために:余罪取り調べと身柄拘束における適正な手続きの確立

余罪取り調べと身柄拘束とは

余罪取り調べと身柄拘束は、犯罪捜査において重要な手続きである一方で、その運用については適正な手続きが求められます。本稿では、余罪取り調べと身柄拘束について、その概要と問題点について解説します。


余罪取り調べとは

余罪取り調べは、すでに犯罪行為が確認された容疑者に対して、その他の犯罪について取り調べを行うことを言います。犯罪捜査において、同一犯の犯行が疑われる場合には、一連の犯行を追及することが求められます。そのため、捜査機関は余罪取り調べを行うことがあります。

余罪取り調べにおいては、捜査機関は証拠の収集や取り調べを行い、犯罪行為があったか否かを確認します。余罪取り調べは、被疑者の自白や証拠が不十分な場合には、容疑者の身柄拘束につながることもあります。


身柄拘束とは

身柄拘束は、容疑者が逃走するおそれがある場合や、証拠隠滅のおそれがある場合に行われます。身柄拘束には、逮捕や拘束の命令が必要となります。逮捕状は、捜査機関が裁判所に請求し、裁判所が発行するものであり、拘束命令は、裁判所が必要性を認めた場合に発行されます。

身柄拘束には、刑事訴訟法に基づく規定があります。被疑者には、拘束理由や取調べについての権利を知らせる必要があります。また、拘束期間には、法律に基づいた手続きが求められます。身柄拘束は、被疑者の人権を尊重し、適正な手続きに基づいて行われることが求められます。


身柄拘束下における余罪取り調べの問題点

しかしながら、余罪取り調べや身柄拘束には、問題点も存在します。まず、余罪取り調べによって、無実の容疑者が不当に拘束され、冤罪を被るおそれがあります。また、身柄拘束によっては、取り調べの強要や身体的な虐待が行われることがあります。これらの問題点を解決するためには、捜査機関の適正な手続きの確立が求められます。

まず、余罪取り調べについては、容疑者に対して適切な説明とアドバイスを行うことが重要です。容疑者は、自分が何について取り調べられているのかを正確に知る必要があります。また、余罪取り調べには、犯罪行為の時期や場所、動機などについて、詳細な説明が必要です。これによって、容疑者が犯罪に関する情報を提供することができます。

また、身柄拘束については、人権に配慮した適正な手続きを確立することが重要です。身柄拘束には、捜査機関が証拠を集めるために必要な場合に限定して行われる必要があります。また、被疑者には、拘束理由や取り調べについての権利を十分に知らせる必要があります。被疑者は、自分が何の罪で逮捕されたのか、何の容疑で取り調べを受けているのか、自分の権利と義務は何かを知る権利があります。

さらに、身柄拘束については、適正な期間を定めることが重要です。身柄拘束は、捜査機関によって必要な期間に限定して行われる必要があります。過剰な拘束期間は、被疑者の人権を侵害することにつながります。また、拘束期間中には、適切な医療や食事、睡眠の確保など、被疑者の健康と安全を確保することが求められます。


余罪取り調べや身柄拘束には、適切な監視が必要

余罪取り調べや身柄拘束については、適切な監視と審査が必要です。捜査機関や刑事司法制度は、適切な審査と監視の仕組みを確立することが求められます。監視機関は、被疑者の人権を保護するために、取り調べの記録や拘置状況、医療措置などを定期的にチェックする必要があります。また、司法制度全体を見直し、被疑者の人権を尊重し、公正かつ透明な手続きを確立することが求められます。

一方で、余罪取り調べや身柄拘束は、捜査機関にとっては重要な手段であり、適正に行われることで、犯罪の早期解決や再犯防止につながることがあります。しかし、適正な手続きが行われない場合には、冤罪のリスクが高まり、被疑者の人権が侵害されることにつながるため、捜査機関は常に慎重に行動することが求められます。

また、余罪取り調べや身柄拘束が行われた場合には、被疑者の家族や弁護士などが適切に支援することが重要です。被疑者の側に立って、適正な手続きが行われるように努力することで、被疑者の権利を守ることができます。


まとめ

以上のように、余罪取り調べや身柄拘束には、被疑者の人権を侵害するリスクがあるため、捜査機関は適正な手続きを確立する必要があります。一方で、犯罪解決や再犯防止のためには、捜査機関の適切な活動も求められます。司法制度全体を見直し、適正な手続きを確立することで、被疑者の人権を守りながら、犯罪の解決に取り組むことが必要です。

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勝又拓哉さんは無実です

今市事件とは

今市事件は冤罪!有罪判決には多くの疑問がある

今市事件の特徴は、①勝又さんの犯行を裏付ける物的証拠がない、②有罪を支える証拠は「自白」と「状況証拠」だけということです。

「自白」と客観的事実が矛盾する

「自白」では、
①被害者の両手両足をガムテープで縛った状態で立たせ、被害者の右肩を左手でつかみ、正面から右手で一気に10回刺した、5回くらい刺した時、被害者は崩れ膝立ちになったが、刺し続けた、



②その後被害者を投げ捨てた、③凶器や軍手などを帰る途中で捨てた、とされています。

しかしこの犯行態様は、被害者の刺創や現場の状況と矛盾します。

殺害方法と被害者についた幾何学模様の傷の矛盾

自白では、被害者は5回刺されたあと、立った状態から膝立ちになり、もう5回刺されたことになっています。他方、勝又さんは、同じ姿勢で胸を10回刺しているのだから、刺し傷の角度は最初の5回と後の5回で変わるはずであるが、ほぼ同じ角度で刺されたあとしか残っていません。被害者は肩をつかまれているはずであるのに、つかまれた跡であるアザはありません。

また、司法解剖を担当した教授によると、寝かされた状態で真上から刺されたと仮定すると、刺し傷の形状に良く符号すると述べています。

殺害方法と血痕との矛盾

「自白」どおり、立った状態で被害者を刺した場合、下の方(足の方)に流れた血痕があるはずです。しかし遺体には、身体の上方や左右に流れる血痕はありましたが、下の方に流れる血痕はありませんでした。
これは寝かせた状況で刺したことを示すものです。

殺害場所は別な場所

鑑定結果から、被害者の体から少なくとも1㍑の血液が流れ出たと考えられます。しかし、現場にある被害者の血痕は数滴で、弁護団の実験から地面に血が染み込んだ可能性がないことが明らかになりました。真犯人は、どこか別の場所で殺害して遺体を遺棄したと考えられます。

「自白」を裏付ける証拠がない

「わいせつ行為」の痕跡はない

「自白」では、当初「強姦した」、その後、「被害者の陰部や胸を触った」「キスしたり、自分の陰茎を握らせ、射精した」と供述しています。しかし、被害者にはわいせつ行為を受けた痕跡はありません。「自白」通りであれば遺体に付着しているはずの勝又さんのDNA(精液、汗、唾液、皮膚片など)は検出されていません。

第三者の犯行の可能性

被害者の頭に貼り付いていた粘着テープから、勝又さんのDNAは検出されず、第三者のDNAが存在する可能性が出ています。

この鑑定について、一審では警察の科捜研の鑑定結果のみが法廷に提出されました。控訴審において弁護団は、鑑定過程のデータの一部エレクトロフェログラム(電気泳動図)のチャートを開示させました。驚くべきことにこのデータには、被害者、勝又さん、鑑定人のDNAとも違う第三者のDNAが検出されていたことが判明しました。弁護団は、粘着テープは真犯人がもっとも接触した可能性が高く、勝又さんが犯人ではないことを示しています。

加えて、一部報道では、裁判では提出されませんでしたが、遺棄現場で栃木ナンバーのワゴン車が目撃されていたり、遺棄現場で勝又さんのものと違う運動靴の足跡が採取されていたりなど、勝又さん以外の存在を示す証拠が報じられています。

「秘密の暴露」がない

「自白」には、真犯人しか知りえない「秘密の暴露」がありません。凶器を捨てた場所、血で汚れた手を洗った公園などは不明のままで、凶器や軍手、被害者を脅したとされるスタンガン、返り血をあびたという衣服なども発見されていません。

また、勝又さんの自白では、殺害後の着衣の処分について一切触れられておらず、もし、自白通りなら返り血を浴びた服で、茨城県常陸大宮市から栃木県鹿沼市までの3時間あまりを運転していたことになります。

「自白」は強制されたもの

勝又さんは別件逮捕後、6月までの約4ヶ月間、連日長時間の取り調べが続き、232時間に及んでいます。取調官は、否認する勝又さんをビンタして壁にぶつけたり、「殺したというまで寝かさない」「殺してごめんなさいと50回言え」と拷問まがいの取調べを行っています。その上、台湾生まれの勝又さんは、日本語が不得手で、他人とうまくコミュニケーションをとることが出来ませんでした。警察は、このような勝又さんの弱みにも付け込んで「自白」調書を作りあげたのです。

憲法38条では、強制、長期間拘禁された後の自白は証拠とすることができないと明記されています。勝又さんの自白は、強制された(任意性がない)ものであり、有罪の証拠にはなりません。

しかも、裁判で公開された「自白」の録画映像には、警察に心身共に痛めつけられて人格的に屈服させられ「自白」に至る過程は録画・録音されていません。一審判決が根拠とした録画映像は、捜査機関に都合のよい取調べ場面だけが録音・録画された不当なものです。

なお、控訴審の判決において取調べの録音録画映像で事実認定した違法性を指摘し、一審判決を破棄しています。

不公正な裁判

検察の後出しジャンケン、それを認める裁判所

東京高裁は、状況証拠が乏しいことに加え、勝又さんの自白の核心部分に信用性もないことが明らかになり、この矛盾を解消し有罪と認定するために、検察に起訴状記載の殺害日時と場所について訴因(審判の対象となる犯罪事実)の変更を促しました。また、高裁が、勝又さんの犯人性に固執するあまり、罪となるべき事実から「動機」もなくなりました。

 
刑事裁判にとって、何が罪となる事実なのかが審判の対象です。攻撃防御の対象を明確に特定することは被告人・弁護人の防御権、弁護権を保障するうえで大事な刑事裁判の原則です。しかも、控訴審の事実調べの終盤になっての訴因の変更は「あと出しジャンケン」もいいとこで、とても公正な裁判とは言えません。

裁判官の独断

高裁判決は、状況証拠を総合評価すれば勝又さんの犯行を認定できるとしました。その中でも、別件逮捕を利用した身柄拘束中、勝又さんが本件殺人事件を大友検事に「自白」させられた数日後に、母親に宛てた手紙を有罪の決め手と判断しました。

その手紙には、「自分で引き起こした事件」「めいわくをかけてしまい、本当にごめんなさい」などという内容が記載され、検察は状況証拠の一つとして有罪を主張しました。これに対して、弁護側は別件逮捕された商標法違反事件とも読め、本件犯行を示すものではなく、多義的に解釈できると反論しています。

一審判決は、「手紙の記載内容のみからでは「事件」が何を指すのかは必ずしも明白とはいえない」「この手紙の存在のみでは、被告人の犯人性を直接的に起訴付ける事情とはなり得ない」と、多義的に解釈できると判断しています。高裁の裁判官の勝手な思い込みだけで、無期懲役とされてはたまりません。

無実が明らかとなった足利事件の菅家さんが、最初に家族に宛てた手紙も、家族に無実を信じてほしいのか、事件を起こした謝罪の意味なのか多義的に解釈できます。高裁判決は、足利事件や過去の冤罪事件の教訓が全く生かされていません。

高裁の論理矛盾

自白は信用できないが、やったのは間違いない

一審の宇都宮地裁(裁判員裁判)は、「状況証拠のみからは勝又さんの犯人性を認定できないが」、「自白」は「犯人でなければ語ることができない具体的、迫真性がある」として、無期懲役の有罪判決を言い渡しました。

二審の東京高裁では、弁護団が提出した法医学者の鑑定書や実験によれば、被害者の遺体にはわずかな血液しか残っておらず、少なくとも1㍑の血液が流れたのに、現場にある被害者の血痕は数滴であったことがわかりました。弁護団の実験から地面にしみ込んだ可能性も否定されました。また、遺体に残された創傷が自白の殺害態様と矛盾することも明らかにされました。

高裁判決は弁護団の反証にもとづき、殺害日時、場所、殺害態様の供述部分は信用できないと一審判決を破棄しました。東京高裁は、検察の有罪ストーリーが破綻した以上、無罪判決を言い渡すべきでした。

ところが、自白と客観的な事実との矛盾については「情状を良くするために虚構を作出した疑いは否定できない」とし、「一連の犯行を行った犯人であることを自認している点では信用できる」として、それを裏付ける証拠も示さず判断しました。

高裁判決は、これまでの冤罪事件の教訓を踏まえて判例が積み上げてきた自白の判断方法に反します。

第三者のDNA

勝又さんのDNA・指紋など一切検出されず 

高裁判決は、状況証拠を総合評価すれば勝又さんの犯行を認定できると言います。しかし、勝又さんの無罪方向の状況証拠は総合評価に入れずに切り捨てています。有罪のストーリーにあう証拠だけを集め、不都合な証拠を排除しては正しい結論を導きだすことはできません。高裁の状況証拠の判断は、最高裁判例にも反するものです。

勝又さんの「自白」では、当初「強姦」した、その後、「被害者の陰部や胸を触った」「キスをしたり、自分の陰茎を握らせ、射精した」と供述しています。しかし、被害者にはわいせつされた痕跡はありません。「自白」の通りであれば、遺体の髪の毛の中から採取された粘着テープや遺体に付着しているはずの勝又さんのDNA(精液、汗、唾液、皮膚片など)は検出されていません。また、高裁段階で開示された鑑定データからは、捜査関係者でもない第三者のDNAが存在することなどが明らかになっています。

ところが高裁は、検察官の「DNAが汚染された可能性がある」という主張を鵜呑みにして、勝又さんの無罪を示す証拠を科学的な根拠もなく排斥しました。

 

今市事件とはどんな事件だったのか?詳しく説明します

今市事件:弁護団および検察の主張と高裁の判断